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(マンション VS 一戸建て)@都心

とっくに店頭から消えた号の話で恐縮ですが、
「住宅情報 都心に住む」2008年9月号の第一特集
「マンションVS一戸建て 都心の選択」の
編集・ライティングを手掛けました。


企画を受けて最初に頭に浮かんだのは、

郊外ならともかく、東京「都心」部で
「マンションか一戸建てか」迷う人ってそんなにいるの?

という疑問。


そもそも、都心だと一戸建ての供給は限られそうですし
値段だって、マンションよりずっと高いのでは・・・? 


・・・しかし、よくよく考えてみれば、
都心の(特に新築の)マンションは造りもゴージャス。
土地代だけでなく建物にもお金がかかっているから、
合わせ技で価格も引き上がるわけです。

一方で、土地だけなら、
都心に残る古い一戸建てを諸事情で取り壊し、
土地を小分けにして売りに出す例も少なくありません。

そういう小さな土地に、木造で一戸建てを建てれば
鉄筋コンクリートのマンションより安くなる。


実際、記事のために出してもらったリクルートのデータでは、
「都心に住む」が取り扱う13区のうち3区で
マンションの平均価格のほうが一戸建てより高いという結果に。

一戸建ての平均価格がマンションを上回る区でも、そのほとんどで、
両者の数値にそれほど大きな開きは見られませんでした。


思い込みは避けなければいけませんね。


・・・そしてもうひとつ、
この企画を通じて自分の「思い込み」に気付きました。

それは「子育てには、一戸建てが向く」ということです。


子どもの足音は、マンションでは苦情に発展しがち。
過去の取材経験でも「子どもにのびのび走り回らせたいから」という理由で
マンションから一戸建てに移り住んだ、という話をたくさん聞いてきました。


しかし、今度の取材で出会った方は
「子育てのために、一戸建てからマンションに買い替えた」とおっしゃる。


「子どもができたときのために、と一戸建てを買ったけれど、
実際に生まれてみれば、
狭い3階建てでは、子どもを抱いての上下移動がつらい。
しかも、1階の子ども部屋は日が当たらなくて寒かった」


・・・なるほどこれも、都心ならではの「一戸建て事情」と言えそうです。

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村野藤吾と戦争

「新しい住まいの設計」の鈴木編集長が絶賛するので、
慌てて終了間際の「村野藤吾・建築とインテリア」展
汐留ミュージアム)に行ってきました。

小さなギャラリーだし、「30分もあれば十分でしょ」と言ったら、
「1時間はかかるよ」と編集長。
結局、1時間半ぐらい粘ってしまいました。


代表作をほぼ網羅し、写真とオリジナル図面に解説を加えた懇切丁寧な展示。
階段の手すりやドアの取っ手、照明器具、家具などの立体資料も楽しいです。


キャプションには、建物の竣工年と併せて、そのときの村野の年齢も記されています。
ひとつひとつ追っていって、ふと気付くのは、
代表作のほとんどが、高齢になってからの作品だということ。
帝国ホテルの向かいにある日生劇場(日本生命日比谷ビル)の竣工が1963年で72歳。
1983年竣工の「谷村美術館」に至っては、なんと92歳。

そこで、戻って「巨匠の残像」に廣松隆志さんが書かれた「村野藤吾」の記事を再読しました。

さらに年譜を確認。

1929年、村野は38歳で独立しています。
1930年代には立て続けに「森五商店東京支店」「そごう百貨店」
「宇部市渡辺翁記念館」が完成。

しかしそのあと、1951年までめぼしい作品がない。

空白の1940年代、つまり「戦争」。

1891年生まれの村野にとって、40年代は50歳代に重なります。
ふつうなら、建築家として最も脂の乗り切った年代に、戦争に活躍の場を奪われた。


展示中盤に、村野による「船のインテリア」のコーナーが設けられています。
南米航路の客船2隻の、一等ラウンジや食堂、スモーキングルームの写真やスケッチ。

スクリーンに、その再現映像が上映されます。
これから世界に乗り出そうとする日本人の誇らしさをにじませた
「新日本様式」のインテリア。

美しい船はしかし、戦時中軍事に転用され、
一隻は撃沈、一隻は爆撃を受けて解体の憂き目に遭いました。
映像の最後に、村野の言葉が掲げられています。
正確には覚えていませんが、「戦争がすべてを奪っていった」という内容の。


廣松さんの記事によれば、
村野が亡くなったのは、1984年11月26日午後8時32分、享年93歳。
その3時間前まで、事務所で仕事をしていたそうです。


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Akasaka Art Flower 08

赤坂に住んでいる私でさえ、
「何やってるのかな」ぐらいに見過ごしていたAkasaka Art Flower 08

駅のコンコースに「赤坂の街が美術館になる」
というコピーが踊っていたのですが、
どこで何をやっているのか、今いちピンとこなかった。
ちゃんと広報されているんでしょうか。

とはいえ、アートを執筆ジャンルのひとつに挙げているくせに、
地元のイベントを「見ませんでした」ではすまされません。
気がついたら終了間際というので、慌てて回ってきました。


展示会場は7ヶ所。

今年開業した「赤坂サカス」と、去年開業した「東京ミッドタウン」。
今は使われていない「旧赤坂小学校」「料亭島崎」「旧赤坂図書館」。

時代の裏表を象徴するような「新築」と「廃墟」。
意図してやってるのか(違うような気がする)、あまりにシニカルな対比です。

「サカス」と「ミッドタウン」の展示は草間彌生。
廃墟は、ポップな若手アーティストたちが彩ります。
どれも楽しめる作品だけれど、
こないだ直島で「家プロジェクト」を見てきたばっかりなので、、、

ほか、赤坂氷川神社でオノ・ヨーコが平和を祈り、
赤坂五通り商店街に椿昇のインコが出現。

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会期は10月13日まで。
連休中の赤坂は、アート巡りの人でごったがえすか!?

ワタクシは、横浜(トリエンナーレ)に逃げる予定です。

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神無月。

8月は忙しさの余りブログ書きをさぼり、
9月はさぼりグセが抜けないままに過ごしてしまいました。・・・

ご無沙汰の2カ月の間には、
「日経アーキテクチュア」の「レビュー」や秋の「住宅特集」、
講談社の「セオリー」&「セオリービジネス」、
おひさしぶりのリクルート「住宅情報 都心に住む」
日本建築学会「建築雑誌」などに書いた記事が世に出ました。
詳しくは、おいおいご報告してゆきたいと思います。


あっというまに10月。

世間には、、、とくに不動産&建設業界には不況の嵐が吹き荒れています。
なかでも、いつも取材にご協力いただいていた
都市デザインシステムの民事再生法適用には驚きました。
きっと立ち直って、またいい仕事をしてくださると思っていますが・・・。


直接関係するところでは、
建築家支援サイト「PF1」が閉鎖され、
「建築雑誌オールレビュー」が終了してしまったのが残念でした。


今年も残すところ4分の1。
ここらでもう一度、気合いを入れ直さなければ。

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