« DESIGNTIDE TOKYO 2008 | Main | 2008年に出会った建築家 »

激変の賃貸集合住宅マーケット

今年夏以降の「日経アーキテクチュア」で私が担当した記事は、
振り返れば全部、「賃貸集合住宅」モノでした。

2008年9月22日号「住宅特集」のリードにも書いたのですが
近年、持ち家の新設住宅着工戸数は減少傾向が続いています。
ピークの96年度には636万戸を記録したのに、
01年度以降はずーっと300万戸台。

これに対して、賃貸住宅は
96年度から00年度までは持ち家同様に減ったものの、
01年度から持ち直し、以後は順調に増加を続けてきました。

そこには、いくつかの大きなトピックがあります。

ひとつは、「デザイン時代の到来」。

00年前後から「デザイナーズマンション」という言葉が
広く使われるようになり、
最近はその数もバリエーションもぐっと増えています。

「コンクリート打ち放し&吹き抜け&ロフト」というハードな物件は、
もはやステレオタイプ。古めかしい印象さえあります。
新築なら「ふつうにオシャレで住みやすい」が当たり前になってきました。

さらに、最近は「バイク」や「クルマ」、「ペット」など
ライフスタイルに合わせた個性が売りの賃貸も続々。
9月22日号では、一歩先行くユニークな事例を取り上げました。

もうひとつは、「証券化」。

J−REIT(不動産投資信託)の上場が始まったのが01年。
時を同じくして、大規模賃貸マンションの供給が増え始めます。
9月22日号でご協力いただいた東京建物も、
01年に高級賃貸マンション事業を始めたそう。
当時はまだライバルが少なかったようですが、今や競争激化とか。


しかし、金融危機はリートを直撃(asahi.com)。
ここへきて、時代がまた大きく動いています。


07年度の着工戸数は、例の「建基法不況」で、
賃貸・持ち家ともに大きく落ち込みました。
08年度はどのぐらい取り戻せるでしょうか?
そして、不動産不況と金融危機の影響が現れそうな今後は・・・。


・・・すっかり記事の話題を離れてしまいました。
以下、覚え書き。

7月28日号のレビューで取り上げたのは
CAn(シーラカンスアンドアソシエイツ ナゴヤ)
宇野享さん設計の「太田の長屋/ゼクエンス」。
なんと3000平米の敷地を10戸の集合住宅で使い切る、
というレアなプロジェクトです。

建築における「傑作」は、
ユニークな敷地と理解ある建主を得てこそ生まれるもの。
建築家宇野さんと、オーナー前原さん、そしてこの広大な敷地の出会いは、
西沢立衛さん設計「森山邸」のそれを思い起こさせました。


8月25日号では千葉学さん設計の「WEEKEND HOUSE ALLEY」。
七里ヶ浜の真ん前という絶好の立地にある商業・住宅の複合施設です。
1階に、日本のサーフショップの草分け的存在(らしい)
BLUE HORIZON」が入居し、住宅も週末利用を想定。
取材時すでにコミュニティーが生まれつつあるようでした。


9月22日号の実例は、
都市デザインシステム×東京電力の「月光町アパートメント
aat+ヨコミゾマコト×アールエイジの「TEO/CT7165」
ブルースタジオ×東急電鉄TOP PRIDEの「LIFT」。

アールエイジは、都心の小さな土地を上手に使って、
ユニークな賃貸事業を行っている不動産会社です。
たとえば「TEO」は、「月額家賃5万円台で中央区に住める!」というもの。
ただし、面積は9平米弱という究極の小ささですが・・・。


10月27日号藤村龍至さんの「BUILDING K」。
若手ながら、すでに論客として名前の通った藤村さんですが、
建築作品としてはこれが処女作とか。

頭でっかちで生意気な若者かと思いきや、
語り口も柔らかく丁寧で、すごく感じのいい青年でした。
あとでオーナーに取材したら、
「こちらの否定的な意見にもいやな態度を見せることなく、
 柔軟に誠実に対応してくれた。
 建築家としてだけでなく、仕事人としてすばらしい」と大絶賛。

見習わなければ・・・。

|

« DESIGNTIDE TOKYO 2008 | Main | 2008年に出会った建築家 »

01・業務月報」カテゴリの記事

Comments

「傑作」言っていただけるなんて
大変うれしいです。
萩原さんの言われるように
萩原さんや取材をしていただけた方々など、
いい出会いがあっていい物が生まれると思います。

僕はただキャンパスを用意し
そこにいろんな絵の具で
宇野さんがスケッチを書いてくれて
そのスケッチを施工会社が丁寧に
仕上げてくれた。

これからの僕の仕事は
それを劣化させないことかな

Posted by: sequenz | Sunday, 23 November 2008 09:20 AM

sequenzさん、コメントありがとうございます!

ゼクエンスはまだ生まれたばかり。
これからが本領発揮ですから、
sequenzさんは責任重大ですよね。
大事に育ててあげてください。

Posted by: 萩原詩子 | Wednesday, 26 November 2008 08:06 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 激変の賃貸集合住宅マーケット:

« DESIGNTIDE TOKYO 2008 | Main | 2008年に出会った建築家 »