明治のこころーモースが見た庶民のくらし
江戸東京博物館で12月8日まで開催中の
に行ってきました。
副館長・小林淳一さんによる解説付きの贅沢な見学会でした。
展示品は、全米最古の博物館と言われる
アメリカ・マサチューセッツ州セイラムの
ピーボディ・エセックス博物館が所蔵する
“モース・コレクション”を中心としています。
そのコレクションとはどんなものか、
展覧会フライヤーのこのコピーが象徴しています。
「日本がなくしたものを、彼がとっておいてくれた。」
大森貝塚の発見者として知られるE・S・モースは
合計3回来日し、3回目の来日は、
博物館資料としての民具収集を目的としていました。
彼が集めたのは、高価な工芸品や美術品ではなく
市井の人々の日常の暮らしの道具。
彼の手に入っていなければ、捨てられていたはずのモノたちです。
会場には、
履きつぶして歯がすり切れた下駄や、
墨で真っ黒に塗りつぶされた手習い帳などが
麗々しくガラスケースに収めて展示されていて、
思わず笑みを誘われます。
これらの品々に、
当時の日常生活を活写した彩色写真と
モースの手による洒脱なスケッチ、
モースの日記から採られた珠玉の言葉が組み合わせられ、
タイトル通り、明治の人々の「こころ」を
いきいきと描き出す展示になっています。
小林さん曰く、この展覧会はとにかく会場が賑やかだそう
展示されている日用品を見て
自分自身の幼少時や祖父母・曾祖父母の日常を思い出し、
同行者に何か言わずにはいられなくなる観覧者が多いよう(笑)。
また、日本を愛したモースの言葉には、
私たち日本人の自尊心をくすぐるものが多く、
それも嬉しくなってしまう理由です。
たとえばこんな感じ...
「(外国人が)道徳的教訓の重荷になっている
善徳や品性を、日本人は生れながらに
持っているらしい」
「人々が正直である国にいることは
実に気持ちがよい」
「この地球の表面に棲息する文明人で
日本人ほど、自然のあらゆる形況を
愛する国民はいない」
これらの美質のいくばくかは今も受け継がれている、
と思うけれども、明治の頃に比べれば、果たして...。
楽しくてほほえましくて、おしゃべりがはずんで、
そして今の「日本」について、
ちょっぴり考えさせられてしまう展覧会でした。
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「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」
会場:江戸東京博物館 1階展示室 (東京都墨田区横網1-4-1)
会期:2013年9月14日(土)〜12月8日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時30分(土曜日は7時30分まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(11月4日は開館)、11月5日(火)は振替休館
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