映画「だれも知らない建築のはなし」
ドキュメンタリー映画「だれも知らない建築のはなし」の試写会に
参加してきました。
建築に興味のある人なら絶対おもしろいし、建築にかかわる人には絶対見て欲しい。
近代建築史が活き活きと語られ、
そして、これから建築はどのような役割を果たすべきか、深く考えさせられます。
映画は、10人の建築関係者への単独インタビューを繋ぎ合わせつつ、
間に、話題に上る建築や、時代背景を物語る資料映像を挟み込む構成になっています。
と、書くと、静的な映画のようですが、
巧みな編集によって、インタビュイー同士の忌憚のない批判が、
臨場感あふれるディスカッションのように、ドラマチックに展開します。
たとえば、建築批評家のチャールズ・ジェンクスが、
自ら定義づけた「ポストモダン」について熱く語った直後に、
批評される対象である建築家ピーター・アイゼンマンが登場して
「あいつは、“ハメルンの笛吹き”だから」とこき下ろすくだりなど、爆笑もの。
アイゼンマンは、ポストモダンについてはボロかすでしたね(笑)。
世界的には、1988年のMOMAの「脱構築主義者の建築展」によって
ポストモダンの流行に終止符が打たれたと語っています。
ただ、「日本でだけは、その後もしばらく生き延びたのだ」
この映画はもともと、昨年開催された
「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」日本館のためにつくられた映像を
劇場用に再構成したものといいます。
このビエンナーレの総合ディレクターが、
映画にも登場するレム・コールハースでした。
そして、ビエンナーレ史上初めて、
ナショナルパビリオン共通のテーマが掲げられたそうです。
それは「Absorbing Modernity 1914-2014(近代の吸収 1914-2014)」。
そのために制作された本作が、同じテーマを踏襲しているのは当然のことですね。
映画は
「第一章 70年代に遡って」
「第二章 日本のポストモダン建築」
「第三章 コミッショナープロジェクト」
「第四章 バブルがはじけて」の4つに章立てられています。
インタビュイーとして登場する建築家は5人。
磯崎新、安藤忠雄、伊東豊雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン。
その共通項は、1982年にアイゼンマンの呼びかけで行われた
国際建築家会議「P3会議」に参加していたことでした。
「P3会議」とは、試写で配られた資料によれば
「アメリカで多くの商業的な高層ビルが建てられて行った時代で、
そういったものに建築家がどう関わるか激しく議論していたんですね。
当時も新しい建築家像が、重要なテーマとしてあったんです」
(監督・石山友美さんのコメント)
この会議を「あまりにも底が浅かった」と酷評したコールハースが、
今では「建築家がいないかのような建築」を目指して高層ビルをいくつも手掛けている。
会議の最も忠実な継承者のように読み取れるのも歴史の皮肉と思われました。
「建築家には、社会に貢献できているという満足感が得られていない」と
語るコールハース。
「その焦燥感のはけ口が、日本の建築家にとっては震災、
自分にとってはビエンナーレだ。ここでは震災は起きていないが」
と結びます。
あ、ストーリーが完結した。
鑑賞中は、この映画に主役がいるとすれば、それは磯崎さんかな、
と思っていたのですが、意外や、コールハースだったのかもしれません。
公開は5月下旬から。
東京は渋谷・宮益坂上の「シアター・イメージフォーラム」で。
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