フェルメール「地理学者」と「天文学者」
現存するフェルメールの作品は、わずか30数点。
そう考えると、東京でただじっと待っているだけの割には、
けっこうな点数を見てきたといえるかもしれない。
中でも、2点しかないという男性単身像は、2点とも見たことになります。
「Bunkamura ザ・ミュージアム」で「地理学者」を見てから4年。
これと対になっている「天文学者」を見てきました。
前者には地球儀、後者には天球儀が描きこまれていて、
そのどちらも、いつ、誰によって製作されたものか解明されているほど、精密に描写されています。
画面左に窓、人物の奥にキャビネットがあり、壁に絵が飾られた構図も同じ。
それぞれの机にはゴブラン織りの布が掛けられているなど、要素も似ている。
でも、よく似た窓は欄間の形が違うし、
地理学者は立っていて、天文学者は座っているなど、
それぞれに異なり、見比べていると飽きることがありません。
モデルの顔はなぜかぼかされているけれど、同一人物のように見える。
そして、着衣の色は「地理学者」がブルー、「天文学者」はグリーン。
両方とも「ヤポンス・ロック」=「日本の上着」というのも、日本人の心をくすぐります。
2つの絵が描かれた1668年・1669年といえば、日本は江戸幕府四代将軍徳川家綱の時代。
つまり、長崎でオランダと通商していた頃ですね。
そのときオランダにもたらされた日本の着物(の模造品)が、
彼の地の裕福な市民の間で流行していたことに思いを馳せると
ますます感興は深くなります。
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