な〜んにも考えずに、トーハク「鳥獣戯画展」に出掛けたら、
平日午前にもかかわらず、入場まで90分待ち、甲巻展示はなんと100分待ち!
真夏日になろうという日に、何の支度もせず屋外に1時間半もいられません。
出直すことに決めて、この日は東京藝術大学大学美術館の
明治ニッポンといえば、最近は「明治日本の産業革命遺産」が話題ですね。
黒船が来て、長い江戸時代が終わり、急ピッチで近代化を推し進めた産業界。
同じ頃、美術の世界では何が起きていたのでしょうか。
タイトルの「ダブル・インパクト」とは
開国以来、日本が西洋から受けた衝撃(ウェスタン・インパクト)と
来日した西洋人が日本から受けた衝撃(ジャパニーズ・インパクト)を指します。
でもって、それぞれを象徴する東京藝術大学とボストン美術館、
ふたつのコレクションを組み合わせた展示です。
日本人の錦絵や日本画、そして洋画、工芸品に加え、
日本人を指導した西洋人による絵画や彫刻も出品されています。
とはいえ、藝大美術館が持ってるものはどっかで見てるし、いつか見られるはず。
狙いはやっぱり、ボストン美術館の所蔵品ではないでしょうか。
川鍋暁斎も菱田春草も、下山観山もよかったけど!
意外な掘り出し物は横山大観。
「富士山の画伯」のイメージを破る、抽象画のような“朦朧体”の作品が帰国しています。
そして、さらなるインパクト、は、初めて知った、小林永濯「菅原道真天背祈祷の図」。
フライヤーのメインビジュアルにもなってます。
まさしく劇画!
菅原道真のイメージも、それより明治日本絵画のイメージも、
思いっきり覆されました。
葉山へ。----遠藤新設計「加地邸」&吉田五十八設計「山口蓬春画室」
フランク・ロイド・ライトの愛弟子、遠藤新設計の「加地邸」。
5月17日までの土日の日中、13時から16時の3時間だけ公開していると聞いて、
新緑の眩しい葉山まで行ってきました。
昭和3年の竣工というから、今年で築87年になるんですね。
つい最近まで生活が営まれていたようで、
トイレに温水洗浄便座が取り付けられていたり。
暮らしの痕跡が濃厚に感じられて、そのことにまず圧倒されました。
「生きられた家」が人の心をつかむのは、どうしてなんでしょう。
大谷石を多用した建物は、やっぱりライトにそっくりです。
規模もプランも全然違うのに、芦屋の山邑邸(ヨドコウ迎賓館)を思い出しました。
特に、玄関前のピロティを利用した、水盤のあるテラスとか。
残念ながら、写真はうまく撮れなかったのですが。
近くには、日本画の大家、山口蓬春の旧家を利用した記念館もあります。
こちらには、近代数寄屋の吉田五十八の建築が残されています。
昭和28年築の画室は、天井が高くてとってもモダン。
開口部を全開できる引き込み式の引き戸には、
日差しを調節するために一部だけ引き違いになった障子や
全開時に戸袋を隠す板が取り付けられているなど、
細かな工夫がいっぱい。
照明もフラットな 天井埋め込み式になっており、今見ても新しい。
数寄屋というより、今流行の「和モダン」でした。
尾形光琳の国宝屏風、56年ぶりの邂逅---「燕子花」と「紅白梅」
東京・青山の根津美術館で5月17日まで開催中の
「燕子花と紅白梅--光琳デザインの秘密」に行ってきました。
会期も終わりに近付き、庭の燕子花も盛りを過ぎてしまいましたが
最後の一週間は夜19時まで開館しています(入館は18時半まで)。
今年は「燕子花図」に加え、MOA美術館所蔵の「紅白梅図」と国宝屏風揃い踏み!
やはり、間近で見ると迫力が違います。幻想的な屏風の世界に吸い込まれそうでした。
「燕子花図」は伊勢物語「八橋」の段、在原業平の東下りの段に取材しているとされるのに
「橋も人物も描かれていない」とよく言われますが、
近付けば絵の中に入り込み、自分自身が登場人物であるかのように感じられるのです。
そして、「紅白梅図」! どれだけ見ていても見飽きません。
2本の梅の幹の姿も枝振りも、可憐な花々も、中央を流れる抽象画のような水流も。
その上、今回の展示では同じ空間に俵屋宗達の重文屏風「蔦細道図」も並んでいるのです。
まさに壮観!!
ほか、光琳のバックグラウンドになったという光悦謡本や、
光琳がデザインした工芸品の数々、弟・乾山との合作陶器も見ものです。
私は特に「流水図乱箱」の内側の絵が気に入りました。ここだけ見たらまるで現代アート。
金と青の色彩の対比もシンプルにして華やか、超モダン!
見逃せません。
山口晃展@水戸芸術館
水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催中の「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」に行ってきました。
当代の人気画家、私自身ももちろん大ファン!
とはいえなにぶん遠方だし、正直、行こうかどうか、ちょっと迷ってました。
しか〜〜し!! 結論から言うと、行かなきゃダメだった!!
描き下ろし作品が多いだけでなく、
会場構成を山口さん自身が手掛けており、展覧会そのものが作品といえます。
行って体験するほかないのです!
それでなくても、山口さんの代表作である「東京圖」などの
現代の洛中洛外図は、巨大な画面に緻密な描き込みが特徴。
画集や図録ではとてもその全容を味わい尽くせません。
実物の前に立って、隅から隅までじ〜〜っくり見たい。
超絶技巧の描写に華麗な色彩は単純に眼福だし、
虚実取り混ぜ時空を超えた、奇想天外な街並みにワクワクします!
また、このギャラリーならではの
細長ーい第6室を生かした「続・無残ノ介」は歩きながら読む劇画。
マテリアルや手法も様々な大小の作品をたどっていくと物語が完結します。
大スクリーンで映画を見るように、劇中に入り込むような感覚が味わえます。
写真は撮影が許された第3室。
銀座エルメスでの個展でも展示されていた「忘れじの電柱」の「イン水戸」バージョン。
階段を上り下りしつつ、いろんな角度から鑑賞します。階段は、ちょうど13段。
会期は5月17日まで。残り少ないですが、オススメです!