映画「未来をなぞる 写真家・畠山直哉」
映画「未来をなぞる 写真家・畠山直哉」の試写会に参加しました。
公開は7月下旬から、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて。
映画「未来をなぞる 写真家・畠山直哉」の試写会に参加しました。
公開は7月下旬から、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて。
イスラエル映画、「戦場でワルツを」。
監督アリ・フォルマン自身の「レバノン侵攻」出征体験に基づいて
アニメーションで描かれたドキュメンタリーです。
日本では、
「おくりびと」(←見てない)とアカデミー外国語映画賞を争った、
ということで話題になりました。
私はどうも「アニメーション」が苦手で、これまで避けていたのですが
「やっぱり、観よう」という気持ちになったのは
この映画が、私にはまったく未知の
「中東戦争におけるイスラエル人の立場」が一人称で描かれている、
と聞いたからです。
第2次世界大戦やベトナム戦争を描いた映画はいくらもあるけれど
現在まで間断なく続く中東戦争を描いた映画は観たことがない。
複雑きわまる中東紛争の一端でも、
知ることができるのでは、と思いました。
けれども、
映画が語るのは、
「イスラエル人」の立場なんかじゃない。
否応なく戦争に放り込まれた
「個人」の心の過酷な彷徨です。
フォルマン監督は言います。
これは「ベトナムやイラクから帰還したアメリカ兵や、
アフガニスタンから戻ったロシア兵でも描ける映画」だと。
観終わって、何より私の心に刺さったのは、
アウシュビッツから生還した両親の元に生まれ、
自らは兵卒として戦場に赴いたフォルマン監督が、
なんと私と同年生まれだった・・・ということでした。
同世代が語る戦争体験。
戦争は、「歴史」の中だけにあるわけじゃない。
今更ながら、そんなことを実感しました。
ドキュメンタリーではあるけれど、
語られる内容のほとんどが「記憶」であるゆえに、
「アニメーション」表現はぴったりです。
リアルと幻想の狭間を漂う映像は美しく、
しかも観るものを飽きさせないエンターテイメントに仕上がっています。
去年観てたら「第1位」でした。
シネスイッチ銀座では15日まで。
おすすめです。
すんごいタイトルですね。
元旦の夜にDVDで観ました。
1年でいちばんのんびりできる、この日をおいては
観ないだろうと思ったからです。
なぜって、、、4時間もある。
信仰とか家族とか、恋愛とか性(っていうかエロ)とか、、
いろんなテーマが詰め込まれていますが、
さて、4時間分ものスケール感があるかというと・・・?
ただ、4時間(それほどは)飽きさせないことは確かです。
カンフーアクション、盗撮、カルト教団、女装、倒錯、純愛、緊縛、流血、脱出劇。
いろんな映画的要素があって脚本の密度は高いし、
何より役者が素晴らしい!!
主役ユウの西島隆弘、ヒロインの満島ひかり、
どちらも初めて観ましたが、 はまり役だし演技も上手い。
さらに、もう一人の主役級、妖しい新興宗教の幹部役を演じる
安藤サクラ(奥田瑛二と安藤和津の娘!)の存在感もすごかった。
4時間見終わって、いっぱい詰め込まれたテーマの中で、
印象に残ったのは 「男の純情」。
きっとこれは、セイシュンから遠く離れ、
なおかつ心のしっぽで「男の純情」を懐かしむ、
中高年オヤジの心に刺さる映画なんじゃないかと思う。
映画評論家・町山智浩さんやライムスター・宇多丸さんが
絶賛していた理由に、納得。(・・・失礼!)
久しぶりに、「また観たいな」と思える映画に出会いました。
ヘロイン中毒の歌手が、一人息子とともに生きるため、再生の道を探る物語。
と、
書いてみて気がつきましたが、最近話題の某事件と似てますね。。。
でも、映画を見ている間は、まったく重なることはありませんでした。
マギー演じるヒロイン・エミリーは、かつてパリで人気を博したこともあるらしい歌手。
しかし、その頃から薬物中毒から抜けられず、
有名ロックスターの夫・リーをも巻き込んでしまいます。
そのうえ、二人の間に生まれた息子ジェイはリーの両親に預けっぱなし。
はっきり言ってダメダメで、しかも高慢ちきな女なんです。
物語は、落ち目のリーがエミリーと喧嘩した挙げ句、
オーバードーズで亡くなってしまうところから始まります。
周囲の人はみな、エミリーがリーをダメにし、死なせたと思う。
リーの両親、とくに義母は、ジェイにも「ママがパパを殺した」と教えるほど。
けれども、ニック・ノルティ演じる義父アルブレヒトは、
立ち直るため奮闘するエミリーの姿に、徐々に心を開いていきます。
物語終盤には、いやがるジェイをエミリーのもとに連れて行く。
そこでアルブレヒトがエミリーに語るのが表題の台詞。
「人は変われるものだと信じている」
この台詞もいいですが、このあとに出てくる台詞がさらにいい。
ジェイと暮らすため、一度は歌手の夢をおさえ、
デパートで売り子として働くと決めたエミリーでしたが
結局、オーディションのため海外に渡ることを選びます。ジェイを連れて。
アルブレヒトが、自分の目を盗んで旅立とうとしたふたりを見付け、
エミリーに真意を質したあとに発する、意外な台詞。
「困難なときに大きな決断をするのは難しいことだ。
それでこそ君だ。祝福するよ」
アルブレヒト自身も、まもなく訪れる妻の死を前に、
「困難なとき」に立ち向かおうとしています。
「支え合おう」という言葉に説得力があり、深く、やさしい。
とてもストレートな「再生」のストーリー。
勇気をもらえる映画です。
今月夜の部の演し物は、キワモノ揃い、、、と言って悪ければ、
レアモノ揃い、です。
歌舞伎観劇歴20年(・・・ぐらいでは歌舞伎の世界じゃコムスメだけど)
の私でも、初めて見る芝居ばかりでした。
幕開けは、近松門左衛門「恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし)」
通称「毛剃」。
物語は近松らしい、傾城の身請け話なのですが、
舞台が博多というところがミソ。
坂田藤十郎演じる、正調上方和事の商人に対し
團十郎演じる海賊(その名前こそ「毛剃」)のセリフは、
なんと長崎なまり。(・・・なのか!?)
郭のお座敷は欄干が中国風(?)だし、
初演当時の観客は「異国情緒」を感じたのかもしれません。
上方商人は、身請けのお金を借りるために海賊の仲間に入る。
「おいおい、いいのかそれで」
と言いたくなるような幕切れでした。
二幕目の清元舞踊「夕立」はもっとすごい。
下郎が高貴な女性を手籠めにしたら、
その女性が下郎の男らしさに惚れてしまった・・・・
というトンデモ筋書きは、
歌舞伎には他にもあるけれど、
そこだけ取り出して一幕、というのはいくらなんでも。
上演は昭和48年以来というのですが、
なんで復活させようと思ったのかわかりません。
観客席には修学旅行の女子高生もいて、
おそらく初めての歌舞伎でしょうに、こんなの見せられるとは・・・。
やっと少し心が洗われるのは、人情話「神田ばやし」。
原作はラジオドラマとか。こちらも昭和45年以来の上演です。
海老蔵がとぼけたお人好しを演じるところに妙味あり。
一方の大家さん役・三津五郎は、思わずわが目を疑ったほど
老け役がハマっていました。
最後は「おしどり」。
前半の美しい人物が、後半で獣(ここではおしどり)の化身となって現れる、
いわば「鏡獅子」パターンのお芝居です。
筋書きはともかく、
ひさしぶりの「平成の三之助(いまや「助」は菊ちゃんだけだが)」揃い踏み。
やっと歌舞伎らしい目の保養ができました。
珍しく仕事に追われている今日この頃。
1カ月のご無沙汰でした。
・・・誰か、待っててくれた・・・?
忙しくても、ときには風穴を空けなくっちゃ、と自分を甘やかし、
週末は、以前から気になっていた映画「チェンジリング」を観てきました。
監督は、クリント・イーストウッド。
ヒラリー・スワンクと組んだ「ミリオンダラー・ベイビー」も、
一瞬たりともゆるみのない緊張感溢れる構成でしたが、
アンジェリーナ・ジョリーとの本作も同様です。
物語の導入部はTVCFなどでも流れたので
ご存じの方が多いと思うけれども、
誘拐された愛息が戻ってきたと思ったら
別人にすり替わっていた、ということから始まる物語です。
アンジェリーナ扮する母親、クリスティン・コリンズの
息子を取り戻すための戦いは
物語途中、権力に対する正義の戦いと重なり、
いったん勝利を収めたところで
観客はあやうく溜飲を下げそうになるのですが、
クリスティンにとっては息子の消息こそすべて。
その、まっすぐで強い意思に胸を打たれます。
けれども、その後の経過は、あまりにむごい。
「ミリオンダラー・ベイビー」も「チェンジリング」も、
ある種の「女の戦い」を描き、ひとつの「勝利」を与えながらも
結末がむごく、それでも観客に希望を与える点で共通しています。
ちなみに、「チェンジリング」のクリスティンは実在の人物。
映画を観たあとHPで、事件のわずか7年後に亡くなったと知り、
映画を超える現実のむごさに、また胸が痛くなりました。
立ち消えになったかと思われた歌舞伎座建て替え。
ついに本決まりになりましたね。
私もやっと、二ヶ月目に入った
「歌舞伎座さよなら公演」夜の部に行ってきました。
最初の演し物は、「蘭平物狂」。実は、初めて見ました。
「お宝」を尋ねる筋書きは歌舞伎にお馴染みだけれど、
そこに、なぜか能で有名な在原行平と松風が絡み・・・
しかし、そんな筋書きはどうでもよくて、
見せ場は「物狂」の踊りと大立廻り。
この立廻りがまた、長いのですね。
今夜のお客はノリがいいというか、、、ずいぶん盛り上がっていました。
私はと言えば、
「ひゅう、ひゅう」と奇声を発して走り回る四天(よてん)を見ながら、ぼんやりと
「これがショッカー(@仮面ライダー。古すぎ?)の祖先だったか・・・」
などと思いめぐらせ・・・
ともあれ、主人公・蘭平(三津五郎)の息子を演じる、
宜生くん(橋之助の三男)がかわいいです。
2本目は「勧進帳」。
吉右衛門の弁慶、菊五郎の富樫。
義経は梅玉、亀井六郎以下は染五郎、松緑、菊之助、段四郎と超豪華キャスト!
「蘭平」と違い、これまで数え切れないほど見た中でも出色でした。
惜しむらくは、
問答での吉右衛門さんのセリフがなぜか、聞き取りにくく感じられたこと。
初日からまだ4日目だからでしょうか。
追い出しは、私の大好きな「三人吉三」大川端庚申塚の場。
お嬢吉三は玉三郎で、始まる前からワクワクしていたのですが・・・
「月も朧の・・・」の語り出しに、下手なかけ声が重なってがっかり。
玉三郎さんもやりにくかったのでは。
その後のセリフ回しもあっさりした感じで、
私には、ちょっと物足りなく感じられました。
しかし節分の翌夜、絶妙のタイミングで大好きな演し物にあたったのですから、
ここは
「こいつァ春から、縁起がいいわえ」
としておきたい、と思います。
思わず拍手しそうになりました。
映画なのに。
ストーンズ・ファンだったことはなく、
レコード(CDではなく)を買ったこともない。
けれども、1990年、初来日のときには
周囲の熱が伝染して、コンサートに出掛けました。
バブルが弾け散る、かすかな気配を感じた頃。
だから個人的には、ストーンズの思い出は
バブル時代に結びついている。
あのときすでに
東京ドームで豆粒のように見えるミック・ジャガーの、
それなのにエネルギーが伝わってくるパフォーマンスに
「その年齢ですごい!」と思ったわけですが、
振り返れば、当時のミックは今の私と同じ年頃・・・。
映画は2006年に行われたコンサートのドキュメンタリー。
だけど、ミックの背後からのショットは、
きっと20歳代の頃と変わらないに違いありません。
映画館からの帰り道、
六本木交差点の「アマンド」が閉まっているのに気付きました。
正確には閉店ではなく移転ですが、
交差点にあってこその「アマンド」ではないでしょうか。
ミックやキースのパフォーマンスは変わらないけれど、
バブルは遠くなりました。
歌舞伎の演目数ある中でも、河竹黙阿弥の白浪物が、大好きです。
とりわけ菊五郎の「お嬢吉三」と「弁天小僧」は何度観てもわくわくします。
歌舞伎を知らない人でも知っている(今どきはそうでもないか?)
あの、お嬢の名台詞「月も朧に白魚の・・・」が始まるときは
「待ってました!」と叫びたくなる。
さて、千秋楽も過ぎたあとで恐縮ですが、
今年の團菊祭は、夜の部に「白浪五人男」が出ました。
それも、「通し」で。
「知らざぁ言って聞かせやしょう」の「浜松屋」と
五人男のツラネの「稲瀬川勢揃い」はお馴染みですが、
時代がかった序幕と
大道具をダイナミックに使う立ち廻りの「大詰」は、珍しい。
通しで観ると、弁天小僧の「出生の秘密」から「悲劇の最期」に至る
数奇な運命(!)の全容がわかります。
弁天小僧は、もちろん菊五郎。
團菊祭なので、日本駄右衛門に団十郎が付き合い、
南郷力丸に左団次、赤星十三郎に時蔵、忠信利平に三津五郎。
贅沢このうえない配役で、たっぷり堪能しました!